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  陸中松川
りくちゅうまつかわ
 石灰で栄えた土蔵街の街並み
 岩手県東磐井郡東山町松川・長坂 【岩手県一関市東山町松川】2005年合併
 構成:妻入土蔵造り商家 ■ 駐車場:なし

 
道路地図に「松川の土蔵街」という記述があったため、前々から気になっていた東山町にようやく訪れる機会を得ました。
東山町は砂鉄川に約2キロにわたって巨岩や絶壁が連なる「猊鼻渓」が観光名所として知られ、日本百景の一つにも数えられています。

東山町に入って最初に目に飛び込んで来るのは、ザックリえぐられた山々と大規模なセメント生成工場群でした。このあたりは古くから石灰の産地であり、現在もセメント生産の恩恵により、山間の僻地でありながら市街地は発展していました。
町役場のある長坂地区とこれから訪れる松川地区はともに今泉街道の宿場町でした。
今泉街道は一関藩城下と三陸の陸前高田を結ぶ重要な街道で、さらに当地は北上川の諸河港を結ぶ内陸の要衝であり明治初期まで六歳市が立つ在郷町として栄えます。

長坂宿は大正14年の国鉄大船渡線の開通によって宿場町の役割を終えますが、行政機関の集中、セメント工場の林立、さらに猊鼻渓への観光客の増加により町の中心となりました。その為か古い街並みは見られませんが1軒だけ土蔵造りの商家が観光案内所として残っていました。

さて肝心の松川宿は、旧今泉街道に替わる国道が町域を大きく迂回、鉄道の開通と中心部の移転によって完全に時代から取り残された感があり、それゆえ重厚な土蔵造り商家が残ることになったのではと思います。
宿場町らしく間口が制限されていたのか、奥行きが長い「鰻の寝床」ですが、完全な土蔵造りの建物でこのような街並みは全国でも珍しいのではないかと思います。
各家々の間は歯が欠けたように空き地となっているため、奥行きのディティールを伺うことが出来ました。しかし、これ以上の減少は防ぐ手だてが必要です。

どこかノスタルジックな雰囲気が漂う松川の街並み