草津温泉のある草津高原の麓に位置する群馬県長野原町。JR吾妻線・長野原草津口駅は名前の通り、草津温泉の玄関口だ。ここから草津への2つのルートがある。1つは草津道路と呼ばれるメインロードで遅沢川沿いに登っていく。もう一つが、時間的にやや遠回りとなるが、まっすぐ北に白砂川を北上し、六合村(くにむら)経由で山を越えて草津へ至る道。いずれも国道292号線で、ちょうど環状に1周している。
六合村は(くにむら)と読む難解地名で、古くは古事記」や「日本書紀」で「くに」と呼んでいた事にゆらいする。当時からの集落である赤岩・小雨・生須(なます)太子(おおし)日影・入山の6村が合併して成立した村だ。
長野県と新潟県に接し、かつては国境でもあった2,000m級の山々に囲まれた山村であり、村を南北に縦貫する白砂川沿いに集落が点在している。秘境の集落らしく、村には木曽義仲の残党をはじめ多くの落人伝説が残されている。
六合村の中心、小雨地区は草津にも近く、昔は「草津冬住みの村」と呼ばれていた。草津温泉は寒冷地のため、夏期だけの営業とし、冬季は小雨村などに下る習慣だったそうだ。
さて、今回国の重要伝統的建造物保存地区に指定された赤岩は、六合村でもっとも下流の集落である。下流といっても辿り着くには、険しい山道をいくつも越えなければならない。
赤岩集落を何の予備知識もなく訪れると、ちょっとがっかりするかも知れない。おおよそ、中仙道の宿場町や城下町の町並みをイメージしていると、あまりにそのギャップが大きいからだ。この赤岩は、日本の典型的な山村集落の景観を保っているところに価値があり、江戸時代末期から明治時代に建てられた養蚕農家が現存しているだけでなく、土蔵に石垣、樹木などから構成される風景。神社や田畑の配置すべてに学術的な価値があるらしいのだ。
正直私も一瞬とまどったが、赤土の真壁造りによる三階建ての養蚕民家など、個々の建物はたしかに見応えがある。赤岩集落の建物はいずれの人が住んでおり、日によっては内部を見せてくれるようだ。
素朴さに価値がある集落だが、重伝建に指定された今後、どのようになっていくのか期待と不安が残る。六合村のHPには”六合(くに)から国へ・・・”の文言に笑ってしまった。
さて、赤岩という地名は、赤い岩山にちなむというが、それがどこにあるのかは分からない。集落は白砂川の深く切り立った河岸段丘上に形成されている。川の名前が白砂川だがらよけい??だ。この川をひたすら遡っていくと、上流に川風呂で知られる尻焼温泉がある。このあたりは河原が鉄分で赤く染まっているのだ。この近くの白根山には鉄山があり、昭和16年に日本鋼管によって開発されている。余談だが国鉄吾妻線(JR)の前身は、戦時中にその鉄鉱石運搬の為に突貫工事で建設された、国鉄長野原線である。かつてはこの六合村を縦貫して線路が敷かれていたが、今は一部その遺構が残されている。
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