茨木県の奥久慈地方最北端に位置する大子町は、町域全てが奥久慈県立自然公園内にあり、日本三大瀑布として有名な袋田の滝や大子温泉郷で知られています。
古くからこの地域は保内郷と呼ばれ、江戸時代の大子村には保内郷全域を支配する水戸藩の陣屋が置かれていました。
現在の国道118号線は水戸城下と塙・棚倉方面へ通じる南郷街道にほぼ相当します。
南郷とは塙や棚倉の地域の事を指し、棚倉を経て現在の福島県郡山市にあった水戸連枝藩の陸奥守山藩と本藩を結ぶ棚倉街道(現国道349号線)の脇往還的な位置づけでした。しかし、棚倉街道に対しで険しい峡谷の山道を行く南郷街道は公用としては用いられず、もっぱら商人や一般旅行者が利用していたといいます。
水戸藩の陣屋が置かれた大子は、この南郷街道の宿場町であると共に、久慈川水運の河岸でもあり、奥久慈地域における政治・経済・物流の中心地でした。
ちなみに久慈川は水量の少ない冬季には舟の運用ができず、季節による物流のギャップが激しかったようですが、保内郷における物資の集散地として河岸問屋が大きな力を持っていたそうです。明治以降は木材の集散地として発展しました。
大子町の中心市街には2筋からなる商店街がありますが、町の郊外に大型ショッピングタウンができた為に、活気はありませんがそれでもシャッター商店街にはなってはおらず、のんびりとした雰囲気が感じられます。水戸藩の支配や河岸の役割が失われて時間が経っているためか、伝統的な建物はほとんど残されていません。しかしかつての銀行であったであろう西洋風の建物などが見られ、依然として奥久慈の中心であった事が伺えます。商店街の外れにある黒漆喰の重厚な豪商建築の建物は町の情報発信施設「だいごレトロ館」として利用公開されています。
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