福井市街の南東近郊に東郷の町はあります。JR越美北線では福井駅から4つ目の、
越前東郷駅が町の玄関口で、駅を出てすぐに、道路の中央に川が流れる風情ある通りに突き当たります。この道がかつての大野街道で、さらに大野から先の美濃まで続いた道でもあった為、別名美濃街道とも呼ばれていました。
JR越美北線の名も越前ー美濃を結ぶ予定の路線で、福井側を越美北線、岐阜側を越美南線として建設が進められましたが、最後の白鳥と九頭竜間の工事が難航し、結局2つの路線はつながること無く、赤字路線として廃線も検討されます。
岐阜側の越美南線は第3セクターの長良川鉄道となり、越美北線はかろうじてJR のまま存続していますが、運行本数は1日に数本しかありません。
話しは反れましたが、越前と美濃を結ぶ美濃街道のうち、福井〜大野間を大野街道といい、その先の美濃国境までを穴馬道(美濃越え)と呼びます。
さらに大野街道は3つのルートがありました。
1つ目は北国街道浅水宿から分岐して大野へ向かうルートで、東郷宿を経由し足羽川沿いを東進したので東郷街道とも呼ばれました。歴史的に一番古い道です。
2つ目は福井城下の春日口から足羽川左岸堤防沿いを東進するルート。
3つ目は同じく福井城下の勝見口から足羽川右岸を東進するルートでした。
この一つ目の東郷街道と2つめの大野街道が交差する宿場町・在郷町として栄えた町が東郷で、今なお街道沿いに商店がならび、そのまわりには寺社も多く見られます。
さらに町の中央からは朝倉街道が分岐して南へ延びます。
かつて東郷銀座通りと呼ばれた時期もあった街道沿いには、2軒の酒蔵を除いて数軒の商店しかなく、水路の幅に対して車道が極端に狭く、一方通行規制もあってか、交通量もほとんどと言ってよいほど無い。人影少なく物静かなその通りを歩くと、水の音だけが耳に心地よい。古い建築物はほとんどその姿を失っていますが、徳光用水路と呼ばれる堂田川が、かろうじて宿場町の面影を伝えていました。
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