金沢の南、扇状に形成された平野部の付け根に鶴来の町はあります。数キロ手前まで金沢のベッドタウンが迫っていますが、町域に入ると急に時間の進みが遅くなったような錯覚をします。今ではとても想像できませんが、鶴来はかつて加賀地方の中心地でした。
鶴来は古来から白山信仰で栄えた町で、白山宮加賀馬場（加賀側登山口）の本宮四社の１つ金剣宮（かなつるぎのみや）の門前町でした。そこから「剣町」と表記されていましたが江戸期に今の「鶴来」に改められます。
この頃になると鶴来街道の宿駅が置かれ酒造業を中心として在郷町へと発展していきます。鶴来の酒は「加賀菊酒」として前田家の御用酒になりました。酒蔵の数は最盛期には12軒にも及んだと言われていますが、現在２軒の蔵が伝統の味を守り続けています。

その２軒の酒蔵、新町の菊姫酒造と本町の小堀酒造の周辺に往時を偲ばせる商家や町家が残されています。