浜名湖の北約30km、奥三河と呼ばれる険しい山間部の中に鳳来寺山という奇岩山があります。この山は、約2000 万年〜1500万年前に数回の火山活動によって噴出し溶岩や、その後の地殻変動と風化侵食作用によって、現在の姿になりました。その特異な山の姿は古くから信仰の対象とされ、山頂近くに鳳来寺が建てられたのは大宝2年(702)といいますからおよそ1300年の歴史を持つ古刹です。その鳳来寺山の麓に伝統的な商家や町家が立ち並ぶ大野の町があります。
大野は鳳来寺から秋葉山(秋葉神社)に通じる秋葉街道の宿場町であると共に、豊橋から別所(東栄町)を経由して信州飯田へ通じる別所街道が交差する交通の要衝でもありました。別所街道は現在国道151号線がほぼ踏襲しています。
国道151号線は、町の中央入口付近で直角に折れ曲がり、町域を避けて北上しているために、町は静寂に包まれ宿場町時代の町並みが残されています。
古い街並みは近代化の波が押し寄せる平野部に限らず、メンテナンスや生活基盤のままならない山間の僻地でも維持される事は難しいのですが、この大野の町はちょうどギリギリの場所に位置するとともに、観光資源や諸産業にも恵まれ行政や経済の中心であり続けた事にあるのかもしれません。もちろん住民の町並みに対する意識の高さも当然あります。生活感が漂い、ほのかに活気にあふれているこの町を歩くとそれを強く感じます。
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