「森の横町なぜ日が照らぬ、秋葉街道の笠のかげ」
静岡県西部、掛川市に北接する森町は、江戸期には防火の神様「秋葉神社」の表街道の宿場町として大変賑わい、もう一つ遠州灘で作られた塩を信州へ運ぶ「塩の道」の中継地としても重要な町でした。かつて宿場町である天宮地区は森町唯一の繁華街で、今はごく普通の商店街に姿を変えたものの、道筋に残る桝形に宿場町の遺構を見ることが出来ます。
天宮地区から約1kmほど北にある城下(しろした)地区。戦国時代天方氏の城下町だった集落で、道路と建物がノコギリ状に配置された町並みは市街戦に備えたものであり、戦国期の城下町であったことが分かります。また、この集落には古い街並みも比較的多く残されていました。
「遠州森町よい茶の出処、娘やりたやお茶摘みに」
森町は上質な茶の産地でもあり、江戸時代の森商人は江戸で茶を売った代金で武士の古着を買い入れてさらなる商売に結びつけました。そして遠州森は全国の古着相場を左右するほどに成長したといいます。
秋葉信仰は全国各地に根強く残るものの、秋葉山は明治の廃物希釈令によって破却され、山岳信仰は途絶えました。(秋葉山は近年再建されました)さらに、現在の交通体系からは大きく外れた場所にある森町は、の存在すら知る人は少ない町でもあります。
人口20,000人弱。静岡県下で唯一「町」を「まち」と呼ぶ森町ですが、昭和の早い内に近代化が進み、そしてそれがそれ以上発展せずに、チルド保存されたようなレトロな雰囲気を残す町並みがそこにあります。
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