湖北と言うよりも奥琵琶湖の呼び方がふさわしい小さな港町塩津は、木之本からマキノ町へ向かうこと約5kmの場所にあります。
国道8号線と303号線の分岐する塩津湊は古くから、敦賀を結ぶ塩津街道と小浜を結ぶ鯖街道の合流地点であるとともに、琵琶湖水運の港町として栄えました。
京や大坂にとって北陸物資の玄関口であった敦賀や小浜も、北前船が下関を経由して直接大阪に乗り入れる”西廻り航路”が開かれると、その役割を失って急速に衰退していき、塩津もその影響を大きく受けます。
しばらくは、近江や美濃諸国の産物を日本海側に積み出す中継地として、生き長らえますが長くは続きませんでした。
妻入りと平入りの町家が混在する塩津の町並みの中で、かつての造り酒屋「沢屋」の商家は信州や上州に見られる二階建本棟造りと、妻面に庇の付いた西日本特有の造りとが融合した珍しい様式の建物でした。
このような建物が1軒でもあると町並みの印象は大きくなるのですが、町家の大半が廃屋ではないかと思うほど、人の気配が無い集落で少し心配が残りました。
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