伏見酒蔵地区

魚屋町商家地区

両替町通

全国の清酒生産量の約１割を占める酒都にして聖地である伏見。「酒処に名水あり」と語られるように豊かな伏流水に恵まれた伏見の語源はまさしく”伏水”。灘の硬水に対して軟水の伏見は、灘の辛口な”男酒”に対して、まろやかでふくらみがある飲み口から”女酒”と評されています。 豊臣秀吉の伏見城建設によって一大商都へと発展した伏見の町も、徳川家康によって伏見城が破却されたあとは、宇治川水運による物資の中継拠点として再出発します。 伏見の京橋や南浜界隈には米問屋・薪問屋・材木問屋が軒を並べ“伏見三仲間”と呼ばれる豪商たちを輩出。この頃はそれなりに酒造りは行われていたものの、現在のような一大生産拠点ではありませんでした。 やがて幕末を向かえ、京と大阪を結ぶ要衝にあった伏見の町は戦乱によって壊滅してしまいます。伏見の町が再興するのは、明治の新しい時代を迎え、この地に陸軍第38歩兵連隊が駐屯を始めてからのこと。軍需を賄うために商工業者が各地から集まり、軍都へと発展していくのです。 そんな時代の中で劇的に成長してきたのが“伏見の酒”でした。もともと酒造りに適した土壌があって江戸期にもすでに酒処となっていた下地があった所に軍の大量需要が現れ、新規に参入する酒造家も相次いで、酒蔵の規模も大型化していきます。現在圧倒的なトップシェアを誇る月桂冠もこの時期に酒造りを始めました。黄桜はもっと後の大正時代の創業です。 実際に訪れると酒蔵の規模や数に圧倒され、甘い醸造の香りが立ちこめる町ですが、伏見と言えばもう一つ歴史的に有名な建物があります。坂本龍馬の定宿で知られ、寺田屋騒動などで有名な”旅籠寺田屋”が実はこのすぐ近くにあるのです。しかも現役の旅館です。 近年まで３０軒以上の酒蔵がひしめいていた伏見ですが、清酒業界の不況もあって高層マンションが目立ちます。まとまった土地はあきらかに酒蔵の跡地です。現在伏見の酒蔵は住所登記こそあれ、大半は町の郊外へ移転し、また合弁で酒造りを行っていて、酒蔵の数もわずかに１８社にまで減ってしまいました。 それでも伏見の中心部には酒都を偲ばせるに十分な白壁の土蔵街や重厚な商家建築・酒蔵建築がわずかに残されています。その多くは大手メーカーの傘下に入った中小の酒蔵の本店だった場所で、現在は酒造メーカー直営の料理屋や販売店として活用されています。酒と相性抜群の料理に舌鼓を打って、ちょっとほろ酔い気分になりながら、歴史の道を散策するのもいいかもしれません。

坂本龍馬が泊まった歴史の現場「寺田屋」は今も現役の旅館

新高瀬川沿い松本酒造は国の近代化産業遺産

■京都伏見の酒蔵
清酒	「美山」	共同酒造	京都市伏見区下板橋町630-3	075-611-3221
清酒	「招徳」	招徳酒造	京都市伏見区舞台町16	075-611-0296
清酒	「豊祝」	豊澤本店	京都市伏見区南寝小屋町59	075-601-5341
清酒	「明君」	松山酒造	京都市伏見区東堺町472	075-601-2528
清酒	「玉乃光」	玉乃光酒造	京都市伏見区東堺町545-2	075-611-5000
清酒	「鶴正宗」	鶴正酒造	京都市伏見区東堺町474	075-611-0221
清酒	「キンシ正宗」	キンシ正宗	京都市伏見区新町11-337-1	075-611-5201
清酒	「蒼空」	藤岡酒造	京都市伏見区今町672-1	075-611-4666
清酒	「松竹梅」	宝酒造	京都市伏見区竹中町609	075-241-5120
清酒	「慶長」	平和酒造	京都市伏見区東組町698	075-601-0012
清酒	「京姫・世界鷹」	京姫酒造	京都市伏見区山崎町343	075-622-2323
清酒	「富翁」	北川本家	京都市伏見区村上町370-6	075-611-1271
清酒	「神聖」	山本本家	京都市伏見区上油掛町36-1	075-611-0211
清酒	「坤滴」	東山酒造	京都市伏見区塩屋町223	075-611-1319
清酒	「月桂冠」	月桂冠	京都市伏見区南浜町247	075-623-2001
清酒	「鷹取」	山本勘蔵商店	京都市伏見区京町1-285	075-611-3288
清酒	「ふり袖」	向島酒造	京都市伏見区向島橋詰町787-1	075-601-1942
清酒	「都鶴」	都鶴酒造	京都市伏見区御駕篭町151	075-601-5301
清酒	「月の桂」	増田徳兵衞商店	京都市伏見区下鳥羽長田町24	075-611-5151
清酒	「英勲」	齊藤酒造	京都市伏見区横大路三栖山城屋敷町7	075-611-2124
清酒	「日出盛」	松本酒造	京都市伏見区横大路三栖大黒町7	075-611-1238
清酒	「黄桜」	黄桜	京都府京都市伏見区塩屋町２２３	075-611-4101