法隆寺から南東へ約5km。北葛城郡広陵町の北端に近鉄田原本線の箸尾駅があります。この箸尾駅を南北に通る細い道がかつて下街道と呼ばれた道です。古代道路である上ッ道を前身とする上街道、下ッ道を前身とする中街道に対して、下街道は中世ごろに整備された道で、古い城下町や環濠集落を縫うように走っています。
箸尾はこの下街道と王寺から桜井に通じる三輪街道の交差点に築かれた中世箸尾城の遺構をベースに造られた環濠集落で、交通の要衝に発展した農村型在郷町と、萱野にある真宗大谷派の教行寺(箸尾御坊)を中心とした「教行寺町」と称される寺内町が合わさり、町場として発展していきました。
箸尾村は江戸時代中期に、萱野村・大場村・的場村・弁財天村・南村などに分村(明治に再合併)。昭和の大合併で周辺町村が合併して広陵町が成立し、箸尾町は最後の昭和31年に広陵町に編入されました。そして「箸尾」という地名はなくなり、その大字だけが存続しています。
現在箸尾地区の中心となっている萱野は宅地化が進み、農村部の面影はありませんが、所々に環濠の遺構が残されています。また下街道の道筋も地内でジグザグに入り組んで南北に抜けているのも、当時の地形・町割りによるもので遺構のひとつと言えます。
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