江津市は島根県西部、大田市と浜田市にはさまれた小都市で、中国地方最大の流域面積を持つ「江の川」の河口に開けた町です。
現在は駅周辺と国道九号線沿いに町の中心がありますが、この町の発祥の地であり、かつてこの江津の町の中心地であった江津本町はJR山陰本線の南の小山の裏側にひっそりと息を潜めるように、そして時計の針がとまったかのように往時の風景を残していました。
白壁の土蔵街や商家、さらには洋風建築など時代がもたらした栄枯盛衰を今に伝えています。
江津という地名は、その名のとおり「江の川の津(港)」の意味で、その歴史は古く南北朝時代の書物にはすでに見られ、中世には朝鮮貿易の基地として栄えた国際貿易港でもあったのです。一説には古代石見国の国府がこの江津であったとも言われており、古代山陰地方においては、この町は今よりもずっとはるかに主要な地域であったようです。
江の川は河口部に肥沃な平野部を形成しなかった為に「無能川」とも揶揄されていましたが、はるか上流は山陽に差しかかる地域までゆるやかに流れ、舟運には適しており、近世には内陸の都市である三次から流域の地域を結んで陰陽連絡も兼ねた物流幹線となります。さらに河口の江津で北前船に積み替えられ海路で大坂へ、また逆に東北や北陸、大阪方面からの物資がこの江津を経由して江の川上流域の内陸部へと届けられる、河海舟運の拠点として長く重要な拠点として繁栄が続きました。
江戸時代のこの地域は浜田藩の支配域でしたが、江津だけは大森銀山の管轄、つまり幕府直轄地だったのです。
しかし、江津を繁栄に導いた舟運や海運は、やがて鉄道の開通により衰退。町の中心は江津駅が設けられた新開地に移っていきました。
(2008.12.27)
町並みの南端付近に建つ都錦酒造
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