浜田市から東へ約30km。冬はスキー客で賑わう浜田自動車道の瑞穂ICは広島からも約40分ほどでアクセスできます。島根県と広島県の県境に近いこの瑞穂ICのすぐ北側に、古い宿場町の面影を残す市木という集落がひっそりと残されています。浜田自動車道は古くからの陰陽連絡道である石州街道(芸州街道とも)にほぼ並行して共用されています。浜田藩主は参勤交代路としてこの道を使い、石見国南端の市木宿場町には本陣も置かれていました。
集落内にある市木神社の祭神で、スサノオの剣から生まれた五男三女神の1柱、一寸島姫命(イチキシマヒメ・市寸島比売命)が「市木」という地名の由来です。ちなみに広島県にある世界遺産・厳島神社の名も同じくこの祭神に由来するといいます。市木という地名は隣の旭町にまたがっていますが、これは旧市木村が昭和33年に西の高峯・丸瀬山・阿佐山を境として、瑞穂町と旭町に分割して合併した経緯によるものです。
石見国最南端、最奥の山間に位置する小さな集落ですが、冒頭の高速道路のICがすぐ側にあるので、アクセスは極めて良好です。今残る市木集落の大きさは南北におよそ500m、北端でL字の鍵曲りとなって集落は終わります。現在残る建物はほぼ全て昭和期に入ってから建てられたものと思われますが、旧道沿いに立ち並ぶ赤い石州瓦で統一された家並みは集落に大きなまとまりを与え、そこに往時の面影を見る事ができます。各家には「屋号」が今でも掲げられています。
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