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三次盆地の南東部、三次市と庄原市に挟まれた小さな町、三良坂。町域の大半は緩やかな地形で、三次へ注ぐ馬洗川沿いに中心市街が形成され、またここが町域内唯一の市街地でもあります。旧石見銀山街道を踏襲する国道184号線が馬洗川の左岸を大きくバイパスして建設された為に旧市街は大正〜昭和初期の姿で残される事になったのです。
古くは太田荘と尾道を結ぶ街道が通り市場町が形成されたのが始まりで、当時の町場は現在の中心市街の東側にある沖江地区にありましたが、江戸時代に石見銀山街道が整備されたのを期に現在の場所へ移転され宿場町として整備されました。沖江地区には今も古市の名が残されています。
三次と庄原という2つの経済圏に挟まれた宿場町三良坂は町家147、酒造家は4軒を数えたという記録が残されています。現在三良坂の町並みは断続的ながらも旧家や商家の伝統的な家並みが残されており、旧街道の西側には昭和初期のノスタルジックな趣を見せる町並みが連なっています。三次や庄原に隣接していたおかげで、産業の誘致には早くから成功していたようですが、逆に人口の流出は避けられず、唯一の中心市街にして商店街でもある三良坂の市街地は極めて閑散としています。
それを補う為に必至で商店街に流される有線放送のポップスが、より一層深刻な様子を外から訪れた者に知らしめている気がしました。近年まで唯一残された酒蔵である「金天鈴酒造」も廃業。酒蔵跡地は駐車場となり、重厚な佇まいの商家建築だけが化粧直しされ、往時を偲ばせる町並みの中心的な建物として保存されていました。
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