岡山県のまん中、中国自動車道と米子自動車道が分岐する落合町は、古くから旭川と備中川の合流点であり、伯耆大山と山陽道を結ぶ大山道(大山往来)と備中高梁を結ぶ備中往来(落合往来)の水陸交通の要衝として栄えた町です。
落合という地名はこの一帯をさす通称名であり、落合の名が指すとおり旭川と備中川の合流点である垂水の河港は落合港と呼ばれました。
勝山を出発した高瀬舟は落合で一泊し、翌朝落合を出発するとその日の夕方には岡山に着きます。落合には物資だけでなく旅人も舟で瀬戸内海まで下った為に川辺に舟宿が軒連ねていました。
江戸時代より落合の名物となっている「落合羊羹」があります。この銘菓は旭川・備中川沿岸の農村で穫れた「備中いなか」と呼ばれる上質な小豆と、川舟によって運ばれてきた讃岐の砂糖が落合で結びついて生まれたもの。
現在、落合町の中心市街に往時の面影を残す街並みは残されていませんが、落合病院の向かいに重厚な旧家の屋敷がひっそりと佇んでいました。
ここから1kmにも満たない西河内川のほとりに酒蔵を中心とした伝統的な街並みが残る集落がありました。「松尾屋」の屋号をもつ明治22年創業の妹尾酒造で、黄漆喰になまこ壁の重厚な蔵屋敷が印象的でした。酒蔵の正面にぽっかり空いた空き地にも、かつては同じような建物が建っていたと思われます。おそらくのこ道筋が旧落合往来と思われ、街道筋を偲ばせる家並みが続いていました。
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