”かんのうら、かぶとうら、こうのうら”などいくつもの呼び名を持ち「神浦」とも書かれた小さな漁村「甲浦」。高知県の東北端に位置する小さな町で、山を越えると徳島県宍喰町に接しています。
かつて、土佐国にとっては陸路海路と共に大坂・近畿方面に最も近いこの港が土佐の表玄関でした。土佐街道はここを起点に山間部を抜けて対岸に至る、現在の国道493号にあたります。
現在も第3セクター阿佐海岸鉄道の終着駅で、室戸半島地域の玄関口を継承しています。
関ヶ原の戦い後、土佐一国を与えられた土佐藩主山内一豊もこの甲浦から入国し、さらに歴代藩主も参勤交代で利用するため、港には藩の宿舎や関連施設のほか、浦奉行などが置かれていました。
甲浦は「ミセ造り」、「ブッチョウ造り」などで書籍にも紹介されています。建物の軒下に一畳ほどの可動式の板縁が突きだし、観音開きを横にした形で上にもひさしの状態で突き出ており、夜間は上下を閉めて雨戸のかわりになるという代物。現在の中心地区である白浜地区の旧街道筋に多く見ることができます。
街道集落でもあった甲浦では、この縁側で商品を陳列したり、旅人を接待したりしました。人でにぎわう玄関港と台風の通過地という場所で生まれた生活の知恵でした。街並みは徐々に一戸建て住宅に更新が進んでいますが、いくつかの古い民家には、今もブッチョウが残っています。
ちなみにブッチョウを漢字で書くと「仏頂」となります。
(2006.8)
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