安芸市から室戸方面へ約10kmの場所にある小さな町・安田町。
町の幅はおよそ4km、国道55号線が防波堤上をバイパスしているために、普通は町の存在すら気付かずに通過してしまいます。ではこの安田になぜ訪れたか。それは全国に名の知れた高知県最大の酒蔵である清酒
「土佐鶴」の土佐鶴酒造がこの地にあるからに他なりません。期待を膨らまし旧道へ下り酒蔵を目指します。ところが土佐鶴酒造の社屋は鉄筋コンクリートの工場で本家の旧家も見つけられず、また旧街道沿いの家々も更新が進み、伝統的な街並みはすでに失われていました。
が、その先の交差点付近から町の色は変わります。交差点に堂々と建つ蔵屋敷。
白壁の土佐漆喰に水切り瓦、形の異なる二連蔵の重厚な商家は現役の雑貨・金物業を営んでいます。その通りの少し先に建つ安田にあるもう一軒の酒蔵が「玉の井」の南海酒造。通りに面した土蔵街はやはり土佐特有の水切り瓦を備え、この土地の酒蔵らしい街並みを残していました。
安田は、中世から安田川の上流に大規模な木材産地を抱え、流木を積み出す河港町として発展していきます。そうした中で安田は多くの豪商や廻船問屋を生み、また他の地域からも多くの商人がこの地へ集まってきました。かれらはこの地で酒造業なども営み、最盛期には6軒近くの酒蔵があったと言われています。当時の屋号で「西屋」が土佐鶴酒造、「山形屋」が南海酒造です。
安田の衰退は木材の乱伐や不正な買いたたきによって藩の山林統制を招いたことに始まります。そして安田は小さな漁村へと姿を変えました。
(2005.1)
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