朝倉三連水車で知られる朝倉町は、筑後平野北東部の農村地域で古来よりの穀倉地帯であり良質米として知られた筑紫米の中で最佳品と呼ばれた上座米が作られていた地域です。朝倉町比良松は日田往還沿いに発達した在郷町で、上座米のほか上座煙草やろうそくの原料となる櫨(ハゼ)、なかでも全国的に名を馳せた筑前櫨の中心地として発展し、現在も伝統的な白壁に千本格子、入母屋妻入りの商家が軒を連ねます。
江戸時代初期に庄屋古河新右衛門が町に枝を四方に広げた平らな松を植えたことから”平松”の地名が生まれたと言われ、寛文年間頃から現在に至る”比良松”と書かれるようになりました。
比良松の町並みの一翼を担う地酒「国菊」の篠崎商店は江戸時代中期に創業した200年以上の歴史を持つ酒蔵です。清酒の知名度はあまりありませんが、4割を占める焼酎は海外での評価が高く、麦焼酎「千年の眠り」はベルギーの「モンドセレクション」で連続して最高金賞を受賞しています。
古くから酒造りは町の有力商人や庄屋格の家が行う事が多く、全国の伝統的な町並みが残る場所においてもその中心的存在であり、その酒蔵が元気であるか否かが町並みの存続に大きく影響しています。町はあまり観光資源とは考えていないようですが、2006年の合併で城下町秋月とも同じ市域になった今、秋月から一本の道で結ばれるこの比良松の整備保存を考えても良いのではないかと思います。
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