国産ワインなどの裏ラベルには製法品質表示とともに、大まかな味の特徴がグラフなどで記されているものが多
く見られます。「甘い」ー「辛い」と「さっぱり」ー「コクがある」のように、おおよそこの2項目に関しての
表示です。
ヨーロッパにおいて
、醸造された地域以外や他国に輸出することが前提であったワインなどには、そのような
客観的な数値表示が古くから記されていたのですが、日本酒においては、灘や伏見の大手蔵を除いて一般的な
「地酒」の多くは、その地元のみで消費されてきた為に、あえてそのような表示は必要なかったのかも知れま
せん。「地の米・地の水・地の空気」で醸された地酒はそもそもが、その土地の料理や素材に合わせて造られ
ているわけですから。
しかし、多種多様な食文化の異なる全国区に流通させるとなると、消費者も内容を知るための表記が必要になっ
てきたようです。近年はワインのようなグラフ表示などを記す日本酒も見かけます。
もちろん、義務ではありませんが国が定めた味覚指標を示す表示も存在します。日本酒度・酸度・アミノ酸度な
どがそれです。しかし注意しなくてはいけないのは、これらの個々の数値は、それぞれが複雑に組み合わさって
多様な味覚を構成するものであり、しかも計器によって出された数値でしかありません。なによりも人の味覚は
その時の体調により舌が感じるものも変化する、非常にあいまいなものです。甘口・辛口といった商品名も、あ
くまでその地方、その蔵の比較基準でしかないのです。しかし、知識として頭の片隅にでもいれておけば、実際
に商品を手にとって選ぶ際には多少なりの選択基準として役にたつものと思います。
日本酒度(甘辛度)
日本酒度とは「日本酒の中にどれだけの糖分や酸が溶け込んでいるか」ということで、清酒の比重を示す単位。
測定対象を15℃にし、「日本酒度計」を浮かべて計測すします。そのときに、4℃の蒸留水と同じ重さの酒の日
本酒度を0として、それよりも軽いものは+(プラス)の値、重いものは-(マイナス)の値をとります。
近年の辛口ブーム以降、この日本酒度が酒の辛口甘口をさす絶対基準のように考えられている傾向がありますが、人間の味覚はそう単純ではなく複数の情報を組み合わせて相対的に判断します。甘辛の感覚は酸度とも深く関係
し、一般に酸度が強いと辛口に弱いと甘口に感じます。これも人それぞれですが。
−10 |
−5 |
−1 |
0 |
+1 |
+15 |
+10 |
非常に甘い |
かなり甘い |
すこし甘い |
どちらでもない |
すこし辛い |
かなり辛い |
非常に辛い |
酸度(淡麗度ー芳醇度)
甘辛度を表す日本酒度に対して、「酸度」は「コクや深み」を表します。しかしこの酸度は「コク」だけでは無
く実際の「甘い・辛い」の味覚にも影響します。
一般的には酸度が高いほど辛く感じる傾向があります。逆に酸
度が低いと糖度が高くなくても甘いように感じるそうです。
測定方法は清酒10ミリリットルを中和するのに要する、1/10規定水酸化ナトリウム溶液の滴定ミリリットル数
のこと。この値が大きければ「さっぱり」、小さければ「こくがある」といった表現が使われます。
アミノ酸度(旨口度)
アミノ酸とは「旨味」の素になる要素です。アミノ酸度が高いと「旨味」の要素が多く、その日本酒の味が濃厚
に感じます。しかしアミノ酸度は高ければ高いほど旨みが増すわけではありません。あまり高すぎる雑味につな
がります。
日本酒のタイプを大きく分類すると下記のような4つに分かれます。本醸造だから、純米酒だからと言うような
カテゴリー別による分類は成り立ちません。蔵元によってまた地方のよって味覚が異なるので、同じ純米酒でも
幅広く分布します。酒の本や雑誌には専門家がテイスティングしたチャート図がありますが、あくまでそれも個
人の味覚であることを前提とし、しかし最初はその表に広く分けられた酒をいろいろ飲んでみて、日本酒の奥の
深さを身をもって感じる。そんな事から始めてみてはいかがでしょうか?
【薫酒タイプ】
華やかな薫りと爽やかな味わい
(吟醸酒や大吟醸酒に多い) |
薫りが高い
↑
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【熟酒タイプ】
練れた薫りと豊潤な味わい
(数年寝かした古酒に多い) |
味が若い ←ーーーー |
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ーーーー→ 味が濃厚 |
【爽酒タイプ】
清楚な香りと軽快な味わい
(生酒や本醸造酒に多い)
|
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↓
薫りが低い |
【醇酒タイプ】
ふくよかな薫りとコクのある味わい
(純米酒に多い) |
ちなみに日本酒は温度によってもその味が大きく変わります。それについては追って。
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