能登半島は東海岸中央部に位置する能登最大に町七尾市から、西海岸の羽咋市にかけて半島を南北に両断する邑智地溝帯があります。その平野部を流れる長曽川の西側、現在JR七尾線の通る町や集落は、藩政期に七尾街道「西往来」にそって形成された街道集落でした。この西往来は能登半島と金沢を結ぶ内浦街道のショートカット・ルートでありましたが、本来の七尾街道（東往来）の維持を守るために加賀藩からは公認されず、利用者は宿抜けの取締りを受けることになります。 しかし江戸中期から交通量の増加によって西往来は藩に公認され、さらに幕末になり能登半島沖に外国船が出没すると、加賀藩は海防策に追われ、能登半島を行き来する藩役人は、最短路であるこの西往来を利用するようになります。しかし街道の集落は伝馬の負担に鳴かされる事になるのです。 田鶴浜街道の追分である良川から西往来は、西馬場・能登部上・能登部下・金丸・鹿島路の集落を経て羽咋へ至ります。 西馬場は「にしばんば」と呼び、番場とも書かれました。古くから織物工場が多い機業地区であり、江戸時代には徳松縮とも呼ばれた能登上布は、古い伝統を有する麻織物として県の無形文化財に指定されています。 かつての七尾街道西往来を踏襲した、現在の主要地方道七尾羽咋線は、長曽川西側地域の幹線道路となっていますが、旧街道は山側の集落を縦貫して今も残ります。そしてこの旧西往来沿いに往時を偲ばせる古い伝統的な家並みが残されているのです。

＜古い町並みと集落・北陸