松江市の東に接し、中海に面する小さな町・東出雲町は旧揖屋町・出雲郷(あだかや)村・意東村が合併して生まれた町で、旧町村から続く3つの市街地からなります。日本有数の難読地名の一つで、山陰道の宿場町であった出雲郷の東側に続く揖屋地区にはわずかですが、古い町並みが残されています。
揖屋町は古くは揖夜、湯屋とも書き、鎌倉期には荘園として営まれていました。旧山陰道に沿って町場が形成されてはいますが、正式な宿場町ではありません。
揖屋は古くから中海漁業の集散地で、水産加工品である「野焼きかまぼこ」の生産が主な産業でした。当時は中海や境港など近海で採れた現在料を使用していましたが、現在は下関や長崎、北海道など全国から取り寄せたものを使用。県下のかまぼこ製造の中において首位の座を守っています。
明治41年に開通した国鉄山陰本線の駅は、藩政期からの中心的市街であった宿場町出雲郷ではなくこの揖屋に置かれました。町並みはこのJR揖屋駅から西側へ、明治5年創業の王祿酒造の付近にわずかに点在しながら残されています。中心商店街は揖屋駅の東側に続いていますが、古い町並みは期待できません。
町の中心に建つ三菱農機本社工場。その前身は出雲郷村出身の佐藤忠次郎が起こした農業機械メーカー「佐藤造機」です。現在も揖屋の町はこの三菱農機を中心とした企業城下町といっても過言ではありません。
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