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      ぶらっと私鉄で男の休日・日帰りの旅
    鉄散歩・秩父らり

 
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 今日は朝から雨だった。だからぞとばかりに秩父へ出かけた。なぜ秩父かと言えば自宅から一番近い、鉄道で行ける山間の僻地だからである。「雨だから出かけた」と聞いて??と思う方もいると思うが、雨だから出て行く旅もあると思う。
 まず、私は雨が好きだ。中途半端に不快な湿度をもたらす高温多湿期の雨でなく(それもはそれでありなのだが)
勢いよくシャワーのように降り注ぎ、かつ気温を一気に下げる清涼な雨。都会の喧噪を消し去り、生命のもつ自然のリズムに近い音と、視界を薄う紗幕(ベール)に被ったような、雨霧の景色を眺めていると、地表に叩きつけられたマイナスイオンもあいまって、非常にリラクゼーション効果が高い。我が家の目の前は雑木林なので、雨に呼応するように、深い樹の香りを放っている。そんな”空気浴”の中で酒をチビリチビリ・・・なんという贅沢。

 つまりそれを、自宅から遠く離れた、郊外の山間部に場所を移してやりたくなった。おそらくその贅沢は何倍にも膨れあがるであろう。まとまった連休にそれ相当の覚悟と旅費をつぎ込んでの「旅」ではない。普段利用している路線の延長線上の「終わり」への興味と好奇心に点に馳せて、乗っていって見る為だけの「散歩」である。

 今回は自宅から100kmにも満たない「山間部」で、一刻を過ごす為だけの「贅沢な大人の日帰り旅」をイメージしてみたりもした。
 さらにもう一つの目的として、10年以上私鉄線沿線に住んでいながら、今一度も乗った事のない特急列車に乗ることである。ちなみにその私鉄とは池袋から飯能までを結ぶ西武鉄道池袋線であり、乗らんとする特急とは「ニューレッドアロー号」である。
 いつか機会があれば、乗ってみたいと思っていたが、ついにその時が来たのである。もちろん思い腰を上げるのに、偶然の思いつきとタイミングといったものも当然ある。

 また今回はさらに、その先に続く、私鉄ローカル線の「秩父鉄道」とのリンクであろうか。もっともここでバラシてしまうが、秩父鉄道の主力車両は国鉄(JR)の旧101系通勤列車を3両編成に短縮したものを、まんま使用しているので旅情は無いが、ある意味においての郷愁感はある。
 これら要素を最大限に堪能する為の「演出」として、雨は最大の舞台装置であったのある。




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 昨夜から降りしきる豪雨の中、レインコートで身を包み、決死の覚悟でまだ薄暗い早朝の雨の中を駅までたどり着いた。そして、そこからわざわざ始発の池袋までいって足を運んで、6:50発のレッドアロー「ちちぶ65号」に乗り込む手続きを行った。手続きといっても自動券売機で特急軒を買うだけなのだが・・・。
 これが別の意味で衝撃であった。西武レッドアローは全席指定席で、特急券は券売機で買う。で、座席の采配は自動で行われ任意の指定はできない。携帯電話でJR東日本の「新幹線」が(空席の)座席を自由に選んで買える時代にである。
 もっとも、ニューレッドアロー号(以下NRA)は、始発の池袋から終点の秩父までわずか76.8kmしかなく、特急と言うよりは有料急行もしくは「ライナー」に近い。土日の旅行客を除いて、平日は所沢や入間から通勤しているサラリーマンが主な客層であろう。
 NRAの10000系車両は、車体以外の主要機器がほぼ前モデルの5000系を使い回しで、その5000系車両自体も西武101系通勤列車の設計をべースにしている。その為か、内装は現在の特急列車に準じた落ち着ける仕様になっているものの、モーター音を初めとするさまざまな感覚が、普段乗っている通勤列車とさして変わらないような違和感を覚えた。もっとも、西武鉄道の通勤列車自体が非常にレベルが高い車両である事は、普段から感心していた。
 日頃普段通勤通学で眺める車窓をクロスシートの特急列車から眺めるのは、これまた新鮮である。

 列車は飯能でスイッチバックして前後の方向が入れ替わる。ガラガラなので、シートの向きを変える。飯能から先は秩父線、単線である。西武池袋線は飯能までで、飯能から先の西武秩父線は運用されている車両も異なる。が、先の記述には間違いがあった。実は西武秩父線と思っていた大部分、正丸峠手前の吾野駅までは池袋線らしいのだ。
列車の運行形態と路線の「籍」にずれがあるなんて事は、10年以上西武沿線に住んでいてまるで知らなかった。

 特急列車はのんびりと、ゆっくり一歩一歩山岳部へ登っていく。所々の駅で上り列車との交換を行う。ローカル線ムードは満天だが、すれ違う列車は普通車両よりも特急NRAが圧倒的に多い。そもそも、土日の早朝から列車を利用する地元脚などいないとはいえ、特急列車の本数が逆転し、なおかつこれほど編成が多いのかと感心させられる。
  後で調べると池袋線・新宿線を合わせて13〜14編成はあるそうな。すれ違う上り特急列車の大半は誰も乗っておらず、空気を運んでいるだけだった。やはり特急というよりは急行ライナーに近い。

 西武秩父線の普通列車は、終点の西武秩父駅停まりの他に、一部、秩父鉄道に乗り入れて三峰口駅まで直通運転する列車と、西武秩父駅の一つ手前の横瀬駅で分割されたうえで、西武秩父駅には入線せずに横を通過して、秩父鉄道御花畑駅で秩父鉄道に乗り入れてから長瀞駅までいく列車がある。特に後者はかつて寄居まで行っていた。
 ちなみに西武秩父線は、計画当初、秩父から先、小鹿野町を経由して西武リゾート開発のメッカとして知られる軽井沢まで延伸する壮大な構想があったという。建設が困難であった事や採算が合わなかった事から日の目を見ることがなかったようだが、自宅から私鉄一本で軽井沢・長野方面へいけるルートというのも、実現していれば面白かったかもしれない。もっとも私が西武線沿線に住まうなど偶然の結果なのだが。
Page1■ 西武特急レッドアロー号で秩父へ
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