一路一会鉄道の旅・鉄路一会鉄散歩・秩父らり
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    鉄散歩・秩父ぶらり
 
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 西武特急NRAは8:13西武秩父駅へ到着。徒歩で秩父鉄道「御花畑駅」へ。駅窓口で1日全線フリーキップを買う。1400円。秩父鉄道ではこれ以外にも三峰口方面へ限定したフリーキップや観光施設と提携した企画キップがいろいろある。まだ、1日が始まったばかりな時間なので、とりあえず、東の終点である羽生まで行ってみる。
 ちょうど、有料急行「秩父路」6000系がやって来た。「有料」という言葉通りフリーキップだけでは乗れず、別に特急料金200円が必要になる。
 よくよく調べずに来たので、始めは秩父鉄道は熊谷までかと思っていた。しかしその先行田を越えて終点の羽生まで埼玉県を横断しているとは思いもよらなかった。
 しっとりとした長瀞の風景が車窓を流れ、荒川にそって電車は走る。急行なので大半の駅は飛ばしていく。リクライニング機構のクロスシートであったので快適でかつ旅情は申し分なかったのだが、3両編成で、私を含めて3人しか乗っていない貸切状態。列車は次第に山間部から関東平野部に入っていく。景色は近郊住宅地のごく普段見慣れた景色に変わっていく。さすがに苦痛だが、しかしこの列車は面白い。
 まず、見てくれは一見近郊型列車のようだが、実は、普段乗り慣れた西武鉄道の初代本格的通勤列車であった101系を大規模に改造したものだ。今となっては珍しい上下分割式の窓やその配置も通勤列車の名残である。そして極力窓の配置に合わせてリクライニングシートを配置している努力が見て取れる。
利用客が少ないゆえのシートピッチの余裕であるが、これを見るとJRのリニューアル車両は雑なものもある。

 中でもユニークでかつお気に入りなのが、運転席後部のドアとの間にわずかな空間があり、そこになんとクロスシートを1列だけ「設置」しているのである。運転席を臨める窓ガラスは、高い位置になるため、普通に座っていると目の前は壁である。さらに横は、真後ろにあるドアの戸袋になっており、視界はすこぶる悪い。戸袋窓が省略された今風の最新列車であれば、かなりの閉塞感があるであろう。しかしこの思い切りがまた良い。まあ、子供のようにひざをたてて、運転席ごしにフロントビューを楽しむ事は可能である。

 秩父鉄道は親会社を始め、主要取引先にセメント会社持つため経営は安定している。明治32年(1899)に設立され、大正11年(1922)に北武鉄道と合併して現在の羽生〜三峯口71.7kmの営業路線になった。
旅客輸送よりもセメント輸送に重点が置かれている為、途中いくつものセメント基地や貨物線、支線があり、JRや東武線とも接続している。

 中山道から別れた秩父往来の宿場町であった寄居は、現在東武東上線とJR八高線が接続する要衝である。そしていよいよ、名実ともに秩父への玄関口である熊谷に到着する。熊谷駅ではJR高崎線と上越新幹線が連絡している。しかしここから先はまだ長い。
 熊谷駅では蒸気機関車のSL「パレオエクスプレス」が入線間近で、それを待ち望む人でホームは賑わっていた。秩父鉄道は蒸気機関車が1日2回、通常ダイヤに組み込まれており、座席指定料金の差額500円を払えば乗る事が出来る。しかし今回は終点まで行くという「鉄の意地」を通した。

 とくにその先、何があるというものでも無いのは、過去に車で訪ねているので分かっている。行田はかつて秩父地方を支配した忍藩10万石の城下町であったが、今は銘菓十万石饅頭以外になにもない。そしていよいよ終点の羽生についた。羽生はまあまあ中規模な町で、東武伊勢崎線と接続しているが、駅前周辺はわざわざ改札を出てまで見ようと思えるものは何もなかった。しかし羽生には訪れて見たい酒蔵が1軒あったので気になってはいたが、駅から遠そうだったので止めにした。

 しかたなく熊谷止まりの鈍行列車に乗って来た道をもどる。この列車は年配者には懐かしく、実際私も懐かしい、旧国鉄の主力通勤列車101系車両である。つい今しがた乗ってきた西武101系ベースの急行列車とはまるで違い、その乗り心地の悪い事。後期高齢、いや末期高齢を過ぎている車両である。秩父鉄道では3両編成に縮められ1000系と称しているが、それ以外はまるで手が着けられていないように見える。
 往時のままの内装は激しく悲鳴をあげ、バネシートは軋み続けている。天井の扇風機はなつかしくまさに走る博物館である。しかもこの1000系は秩父鉄道のコーポレートカラーの他に4編成が、京浜東北線や中央線など4色のリバイバルカラーが復刻されファンを喜ばせている。ちなみに今乗っているのは中央線カラーである。

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