一路一会鉄道の旅・鉄路一会>青春18キップで廻る・九州鉄道の旅(2)
   青春18キップパスで廻る 
  九州ぐるり鉄道の旅
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田野駅で待つこと11:08。やってきた(6875M)は、な、なんとJR九州の新型712系900番台であった。ドーン研究所デザインの近代的なデザインの2両編成だがワンマン運転。車体はアルミの日立製で、内装は白を基調とし転換クロスシートだ。しかも特筆しなくてはいけないのは、シートが木製なのだ。北欧調と言えるか、旅館の座椅子のあれとか。さらに2ドア間のほぼ全ての座席をカバーする1枚ものの大型ガラス窓のパノラマ感といったらどう表現すればいいのか。へたな特急やリゾート列車の上を行くレベルだ。おそるべしJR九州。おそらく黒字で大企業化した本土3社では真似はできないだろう。

田野駅を出てすぐ、駅でない場所で列車交換の為に数分間停車した。「信号場」というやつだ。行き違いの列車は同じ817系。しかし、大パノラマの一枚窓も、結構「汚い」のが難であった。列車の本数が少ない為に線路も架線も錆びやすいのか、折角の美しいアルミの車体もうっすら茶色く汚れている。

新型車両は静かでパワフルで山岳部を軽快にかつ快適に走る。田野から都城までは5駅。山之口駅で列車交換。そして都城駅1番線に到着した。

12:13発の吉都線、隼人行き直通(2927D)は1両のワンマンで旧国鉄のキハ40系8000番台。アイボリーにブルーのレギュラー色が、5番線ホームに待っていた。出発まで30分ほど時間があったので、一度改札を出てから駅弁を購入した。

吉都線は名前のとおり吉松と都城間61.6kmを17の駅で結ぶ高原路線。「えびの高原線」の愛称がある。もともとは、海沿いの都城〜隼人間が開通するまで、こちらが日豊本線だったのだ。本線の新ルート開通によって地方交通線に格下げされたのは、東海道本線と御殿場線や山口県の高徳線に似ているが、吉都線が接続する肥薩線もまた同じ運命をたどった路線であり、なんとも哀愁感溢れるローカル線の旅になりそうである。

吉都線は先に買いたいように吉松駅までの運行だが、この列車は肥薩線に乗り入れ、鹿児島県の隼人駅まで直通するのだ。隼人駅は日豊本線との接続駅であり、都城で降りずにそのまま先に進めば時間的にも早く着くのだが、少しでも多くの路線にのる事と、えびの高原越えの醍醐味を味わうためにあえてこの列車に乗らなければならなかった。なによりローカル線の旅が最大の目的だから。

さきほども触れた吉松駅で接続する肥薩線は旧国名の肥後・薩摩から名付けられ、八代〜隼人間124.2kmを結ぶ長大路線だが、この間の駅数はわずかに28駅しか無い。いかに過疎地を走るか、鉄道の需要が無いかを表している数字だ。ところが実際この路線を走るとある事に気が付く。実に人の住める土地、すなわち町や集落をほとんど通らないのだ。あるのは厳しい大自然だけである。

肥薩線の古い名称は鹿児島本線であった。やがて海岸周りのルートが開通するにあたり肥薩線として地方線に降格されてしまった。現在も海沿いのルートは熊本・鹿児島両県の中核都市を通っており、初めから海沿いを通せばよかった話しだが、これも先の東海道本線や山陽本線同様に軍部の要請でわざわざ険しい内陸の難所を通ることになったのだ。つまり軍部は敵軍艦からの艦砲射撃による鉄道の破壊を恐れたのだ。



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都城駅を出発してからしばらくは都城市近郊のベッドタウンが続き車窓に旅情はないが、すぐに田園風景に変わってくれた。右手前方に霧島岳が見える。列車は霧島連山を軸に周回するのだ。高崎新田駅で列車交換の為、数分停車。高原(たかはる)駅では霧島岳がまじかに迫る。この路線と併走する宮崎自動車道がからんでくる。

小林駅は宮崎県西端の主要都市小林市の玄関口である。やがて車窓には霧島岳にかわり韓国岳が登場。ここから山岳線の始まりで、駅を出た列車はディーゼルを唸らせながら急勾配を登っていく。えびの高原麓の町えびの市の2つの駅を過ぎて、九州自動車道の下を潜り、京町温泉駅をすぎると、いよいよ鹿児島県に入る。鶴丸駅を経て肥薩線との分岐である吉松駅に到着。本来はここで終点だが、この列車は肥薩線に乗り入れて先へと進む。

さすがに標高が高いだけに気温が低くなってきた。空にも厚い雲が覆う。右手には熊本県と鹿児島県・宮崎県の国境となる連山が連なる。国道221号の名所?加久藤(かくとう)峠を越える「えびのループ」が見えるかも。

山脈に挟まれながらも開けた、えびの高原の盆地平野と別れを告げ、吉松駅をすぎると隼人駅までは秘境に準じる山岳路線となり、山間を縫うように走る。大隅横川駅は鹿児島県で一番古い駅。霧島温泉駅で明日乗る予定の黒い「特急はやとの風」とすれ違う。
嘉例川駅は国の重要文化財。肥薩線には鉄道初期の貴重な建物が非常に良い状態で残されている。これらは明日あらためて訪れることになるだろう。

表木山で列車交換の為に12分ほどの停車。列車を降り、冷たい空気とここちよい日光で酔いを覚まし、シャッターチャンスを待つ。至福のひととき。
日向山にさしかかる手前ではるか眼下に広がる町の景色。遠くには錦江湾が。列車はひたすら勾配を駆け下る。そして14:52終点の隼人駅の2番線に到着した。


 
Page1■ 大隈半島最南端の駅の朝・日南線
page2■ 吉都線・肥薩線で鹿児島へ
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