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   青春18キップで廻る   
  山陰山陽じぐざぐ鉄道の旅  
 
 
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すでに昼時は過ぎていたが、今日の旅の目標はもう7割方終わっている。あとは山陰本線でひたすら下関まで下っていくだけだ。
が、これが容易ではない。山陰本線1本ならば楽なのだが、下関まではズタズタに運行系統が分断されており、かなりの乗り継ぎが必要なのだ。最悪7回乗換が待っていたが、運良く最小限度の乗り継ぎで行けそうだ。それでも3回は必要となる。もはや山陰本線は幹線では無く、地域輸送の線路が1本に繋がっているだけのありさまだ。

益田から先、山陰本線を走る特急列車はみな山口線経由で山陽新幹線の接続する新山口(旧小郡)を結ぶ為、山口線が山陰本線の重要な役割を奪い実質的に「幹線」に昇格している。そして本来の益田から下関にかけては、江戸時代に山口県全域を支配した毛利家の萩藩の城下町があるにもかかわらず、目も当てられない超ローカル線になっているのだ。もっとも古代官道から続く「山陰道」も山口線と同じルートで瀬戸内海に出るのだが・・・。

そもそもこの山陰本線は「本線」と名がついているが、初めから日本海沿岸縦貫線として建設されたわけでは無かったし、その後もあまりやる気は感じられない歴史をたどっていく。前身は各地で設立された私鉄であり、山口県の私鉄長州鉄道、京都府側は京都鉄道、阪鶴鉄道など、あくまで地元輸送の為の鉄道建設として始まった。
その間の部分は国によって、山陰と山陽連絡線の延長や支線、さらにさきほどの山陰私鉄がカバーしていない山陰主要都市の地域輸送の為に地方交通線として建設が進められていった。小串線・美祢線・浜田線・陰陽連絡線・舞鶴線などなど。やがてそれらを結んで山陰東線、山陰西線が部分部分で建設・延伸するたびにその名称変更が行われ、私鉄3社の買収国有化によってついに一応のところ1本に繋がり「本線」の称号を得たのだ。

とはいうものの、基本的に運行系統は当時から変わっていないようだ。日本海沿岸線では、東北から北陸まで羽越本線や北陸本線などがあり、太平洋側のそれにくらべると相当に劣る物の、かろうじて「本線」の体裁は守られている。しかし、山陰地域はあまりに沿線における産業構造や人口構成さらに経済基盤などが違いすぎるようだ。



 

宍道駅から出雲市駅までは(943D)キハ47系3000番台2両編成でセミクロスシートワンマン運転。両開き3ドアで通勤・通学仕様。カラーは国鉄色というか「たらこ色」でローカルムードは高い。

列車は出雲の平野部を軽快に走り抜け、最初の乗換え駅である出雲市駅に到着した。出雲市駅は近代的な高架駅で駅前も再開発によって都会的になっている。駅舎も立派で駅ビルもある。寝台特急「サンライズ出雲」もこの駅が終点である。
ここから益田までは快速列車だ。とりあえず駅で遅い昼飯の為に、弁当と地酒を購入する。

で、ホームでは列が出来ていた。さらに待つこと。ホームは列車を待つ乗客で溢れていた。ちょっと危機感が。
そしてやってきた14:03発の快速列車(3455D)は大都市圏の通勤列車のような外観にへんてこなカラーリングの(一応)新型快速車両キハ126系1000番台・2両編成のワンマンだった。到着した列車の車内は満員であり、さらにホームの乗客が押し込められていくのだから大変だ。ゆっくりと昼食の目論みは脆くも崩れ去ったばかりでは無く、まさかこんな場所で通勤列車のようなラッシュに見舞われるとは・・・・。しかし、旅慣れた?私はそそくさと、無人の後部運転室を陣取ったのだった。個室感覚で食事も出来る。

このキハ126系は2000年にJR西日本が山陰本線の高速化のために投入した車両で、やはりコストダウンの為に都市部を走る通勤列車などの部品を多く共用している。片運転台2両編成のキハ126形と1両・両運転台のキハ121形がある。内装は腰掛や手摺、窓のフレームなどに木質系の材料を使用することで暖かみのある空間を演出している。木材を内装に多用すると言えばJR九州の車両が知られているが、あちらは近代的な北欧風インテリアを思わせるデザイン性の高いものだが、この車両は良く言えばどこかレトロ感が、悪く言えば非常に安っぽい。

さて、これらの乗客はいったいどこまで乗っているのか。できれば早々に出雲市圏の途中駅で、少なくともその先の主要都市である江津や浜田で減っていってもらいたいと願ったが、どうやら多くは終点の益田まで乗っていくらしい。最後部の運転台の半個室で最後尾の窓から流れさっていく景色を肴に遅い昼食を摂った。車内で昼食及び酒を食らっているのは私一人だけだった。いつもは最前列で進行方向の車窓に食らいついていたが、こうして流れ去る風景を眺めるのも郷愁感があって良い物である。灰色の空が「裏日本」らしさを演出し、ちらちらと粉雪が舞っていて、なんか何かのCMのワンシーンを彷彿させる。


 
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