一路一会鉄道の旅・鉄路一会>青春18キップで廻る・九州鉄道の旅(3)
   青春18キップパスで廻る   
  九州ぐるり鉄道の旅  
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2009年・元旦は本州最南端(を走る指宿枕崎線)の終着駅、枕崎駅から始まる。あたりはまだ真っ暗だ。ちょうど初日の出は指宿あたりで向かえる事になる予定。

早朝も小雨が降りしきる枕崎駅で一人待つ。6:10発の始発列車(1328D)は昨日乗ってきた列車がそのまま折り返すため駅に留置していた。アイドリング中だったが、運転手は乗っておらずまだ駅の控室にいるようだ。
最南端といえども、冬の早朝、しかも雨がふりしきる中で相当に寒さが体力を奪っていく。

ようやく、運転手が控室から出てきて車内に乗り込むことができた。こんな時間だし、私一人を乗せたまま出発するのか、とも思ったが、学生を中心に4〜5人の乗客。中には18キップの旅行者らしき人も。列車が枕崎駅を出発しはじめる頃には雨脚はさらに強くなっていた。暗闇の中を走っていく列車の窓に雨がたたきつける。周りの風景はなにも見えないが、止まる駅で意外にも人の乗り降りがあった。

白沢駅は枕崎飛行場のそばにある駅だが、まだまだ真っ暗で何も見えない。沿線では最近市町村合併で「南さつま市」や「南九州市」など似たような名前の市が誕生した。
切り通し区間では伸びた樹木が車体をバリバリ引っ掻く。水成川駅で6:30を向かえた。本来なら空が少しでも明るくなってきても良い時間ですが、今日はあいにくの雨模様。

西頴娃駅でATSの警告音が鳴り響く。下り列車との行き違いか。空に青味が載ってきた。周りの景色も徐々にその輪郭がはっきりりしてくる。陸地と海の境界も分かりはじめる。山と山の隙間からわずかに見える太平洋。
今いるのは本州の最南端であるという事をなんとか認識する瞬間。果てしなく広がる太平洋。

山川駅で列車交換。指宿駅に着く頃にはすっかり明るくなっていた。初日の出はすでに水平線の上の雲の中にあるようだ。そもそも日が出る方角が真逆であった。列車から初日の出を見ることは出来ないのだ。

枕崎駅で行き違いのキハ200系、特別快速「なのはなDX」が普通列車として運転されていた。「ああ、あれに乗りたい」。指宿〜鹿児島間の運行本数は多い。生見駅、瀬々串駅、五井野、谷山で列車交換。
鹿児島近郊でも山の上にうっすらと雪化粧が施されていた。しかし気温は高い。南鹿児島駅で列車交換の為に5分の停車。ようやく3時間かけて列車は鹿児島中央駅の2番線ホームに到着。時刻は8:53分。



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さて、今日は九州の旅の醍醐味が凝縮された日だ。鹿児島中央駅の「みどりの窓口」で特急券を購入。
真っ黒な特急列車「はやとの風」に乗るためである。別途乗車券と特急券1,930円だが、決して高くはない。それほど乗る価値のある列車であった。そしてその(7022D)は5番線ホームに入線した。
列車は旧国鉄キハ40系を高出力に改造されたJR九州のキハ147。黒の車体など普通はありえないが、ゆえに清冽な印象。まるで黒い軍馬の毛並みにも似た光沢。金色の帯。皇室の特別列車のような印象だ。

特急「はやとの風」錦江湾側が A席。2両編成で1号車が指定席、2号車は自由席。しかし、あえてリクライニングシートには座らず、展望席に座った。足もとから天井まで回り込んだ大きな窓が開放的で感動だ。しかしよくここまで、このキハ47系を改造したものだと感心。

よくよく思えば今日は元旦だが乗車率は3割くらい、ほぼ全員が旅行者だ。鹿児島中央駅から吉松までの山岳区間には歴史の古い由緒ある駅がいくつもあるが、「はやとの風」は日豊本線の駅は通過するが、肥薩線のぞれらの駅にはいずれの駅にも長時間停車する。本数が少ない路線ゆえに可能なことだ。

昨日と同様、錦江湾と桜島を車窓に錦江湾は1/4まわって隼人駅で少し休憩。いよいよ昨日と逆方向に肥薩線へと入っていく。。列車には女性のアテンダントが数名乗っている。その他旅行会社の搭乗員がフォロー。名所の説明が車内に流れる。

6分停車する喜例川駅は築106年の駅舎。霧島温泉駅は特にどうってことはないが、列車交換の為に4分の停車。
朝から降っていた小雨は雪にかわっていた。
105年の歴史をもつ大隅横川駅で4分の停車。金の採掘で栄えた町だった。150mのホームは往時の繁栄ぶりを物語っている。戦時中の米軍による機銃掃射の傷跡も残るというが、見つけることは出来なかった。
栗野駅でちょっと停車。西郷隆盛が療養した栗野岳温泉の玄関口である。

そして惜しまれつつも終点の吉松駅の1番線ホームに到着した。吉松駅で駅弁を買う。「たまりの駅弁」充実した内容で630円は安い。積み上げられた駅弁が飛ぶように売れていく。品切れになり、おやじさんが追加の弁当を取りに走る。

肥薩線は人口密度の低い地域を走るが、いくつかの異なる車窓の風景を持っていることで知られる。
八代 - 人吉間の球磨川沿いの風景は通称「川線」と呼ばれる。そして高低差430mの国見山地を越える人吉 - 吉松間のループ線とスイッチバックが連なり、日本三大車窓の一つに数えられる矢岳越えの区間は通称「山線」と呼ばれている。ここから先は「山線」の始まりで、本日2つめの目的地である。


 
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