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  土日で会津〜新潟鉄道紀行
 会津只見線を廻る

 
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 13:08会津若松駅をゆっくりと出発した只見線キハ40系は、会津鉄道と分岐する西若松から西へ反れ、時計回りに会津盆地を周回して高度を上げていく。運転席にはヘルメットをかぶった保線要員が立っていた。路線の点検の為か、それとも運行の支障をきたす事態に備えてか。聞いた話では、只見線のキハ40系には一部区間で鉄道無線が通じないため衛星電話が装備されているとか。なるほど、いまから自分がどんな世界へ入っていくのか緊張で酔いが少しづつ抜けていく。

 会津高田駅手前の大平原のど真ん中で列車が急に止まり、まったく動かない。停止信号を知らせる車内放送。おいおい、まさかここで引き替えすなんて事はないだろうね。
 気をもんでいると列車はすぐに動き出した。秘境へ突入する前の最後の市街地、会津坂下(あいづばんげ)は、
「飛露喜」の銘で知られる廣木酒造本店のある町である。続いて越後街道の宿場町・塔寺を過ぎると只見川に沿ってひたすら南下していくのである。小さな集落の中にあるような駅が続く。駅というよりも停留所に近い。
 驚くのは一駅、一駅での停車時間が異様に長いことである。3分から5分は停車している。僻地の路線バスでもこんなに待たない。1日の運行本数が少ない上に、豪雪地帯ゆえに乗り遅れると大変な事になるからであろうか。
5分走っては3分休むといった、非常にのんびりとした道程である。なるほど5時間というのもうなずける。これからが大変だ。雪はやむことなく、集落の輪郭すら分からなくなるほどの積雪地帯なのだが、いささか景色に変化が欲しくなってきた。
 
 そんな気を察してか、柳津を過ぎたあたりから次第に秘境ムードが濃くなっていく。トンネルを抜けると綺麗に雪化粧された深い谷間が姿をあらわし、また再びトンネルに入る。また美しい川、またトンネル・・・・。
 やっと姿を表した自然を肴に、昨日会津田島で買った「国権」を持参したグラスにそそいて、ちびりちびりと始めた。ああ、なんという幸せだろう。
 手つかずの自然とそのスケールに呑まれそうになる。手つかずといっても湖はダム湖だし、山の稜線には送電線は見えるももの、そんなものは吹き飛んでしまう雄大な景色に感動しつつ、明日からはまたいつもどおりの週が始まり、職場にいる自分が想像できるであろうか。もとの生活にもどれるのであろうか。


 只見川沿いに建つ会津川口でようやく1/3ほど来たであろうか、21分ほどの休憩タイム、いや停車である。
雪は少し収まり、絶好の撮影タイム。みなぞろぞろと列車を降りて駅を出た。もちろんこの駅の乗降客ではない。
 駅前の自販機が灯す文明の灯りに、妙なノスタルジーを覚えるのはそれだけ毒されている証拠か。お金を入れてボタンを押すと商品が出てくる、あたりまえの事に感動を覚えるにいたっては、酔い以外に考えられない。

 次ぎの休憩タイムは只見線の「ヘソ」ともいえる町、只見駅で27分。まるで高速バスツアーのようであるが、ここでも会津若松行き列車と交換するのである。ちなみに運転手も交代してそれぞれが、来た「国」へ帰るのである。なんだかロマンだな。日も落ちてきているのに、他に光が無いためか、まだまだ明るく感じる。

 いよいよ六十里越トンネルを抜けて新潟県へ越境する。その手間の田子倉トンネルと抜けると、次のトンネルとのわずかな地上部に田子倉駅があるのだが今の季節には止まらず通過してしまう。併走する国道252号線はこのあたりでは完全に通行止めである。除雪もされていないので、もはや道路がごこかは分からない。
時折、川に架かる橋の姿から国道の位置が分かるものの、その橋梁の上には2m近い雪が積み上げられている。

 六十里越トンネルを抜けるとそこは新潟県である。あたりは完全に日没となっていた。大白川駅で7分の停車。
終点の小出まであと少しだが、まだまだ1時間近くある。疲れも出てきた。
 豪農の屋敷がある入広瀬のあたりは、造り酒屋の玉川酒造もあって、なんどか来た事がある。越境して自宅に少し近づいた事もあって、自分のテリトリーに帰ってきた気分になった。
 関越自動車道の下をくぐり、魚野川を渡り終点の小出駅は目前なのに、列車は速度を上げることなくゆっくりとゆっくりと駅に滑り込んでいった。定刻通り17:42小出着。

 上越線との接続駅である小出は非常に閑散としていた。上越線の下り長岡行きはすぐの接続があったが、上りの水上行きは約1時間後の18:32分の接続。駅前には食堂が1軒ある程度で散策する気もおきない。
 ひたすらに長い待ち時間である。列車到着の放送が流れ、ぞろぞろと動きだす人々にまじりホームへ移動する。ようやく到着した上越線水上行きに乗り込む。わずか2駅の移動で上越新幹線の接続する浦佐駅でおりた。
 上越新幹線とき346号は19:14で、また20分近くある。夕食の時間になってきたが駅には駅弁売り場も食事する場所もなく、まあそれほど空腹でもないので、ホームで列車を待つ。
 初めて乗る上越新幹線は、200系をリニューアルした車両でした。まあ、浦佐駅なんざ東海道新幹線でいうところの「こだま」クラスしか止まらないので、しょうがない面もあるが、かなり近代的にリニューアルされているので、快適ではある。なにより、いままで5時間以上乗ってきた只見線との速度ギャップにより、日常へと引き戻される思いであった。あとわずか2時間で東京に着なのである。

 新幹線はガラガラで、好きな席に座る事ができたが、しかし越後湯沢駅でスキー客がどっと流れ込み、通路も立ち客であふれ、GWのラッシュのごとく混雑していた。


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