一路一会鉄道の旅・鉄路一会>土日キップで廻る甲信越と羽前
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  甲信越と羽前の旅 
 
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 余目駅は、あとから出来た羽越本線に陸羽西線が合流する形になってしまった。陸羽西線は羽越本線に乗り入れて酒田をめざす。島式2面4線ホームで、交通の要衝というよりは、すこし大きな地方駅であり、駅前も閑散としている。今回の目的地である、羽前庄内の酒どころと呼ばれる羽前大山へは鈍行列車しか停車しない。しかし、特急列車も含めて上り列車の接続は2時間近くある。なにも無い余目での2時間は大いなる時間のロスである。

 路線バスくらいあるだろうと思ったが、鶴岡方面は無く、それどころかバス自体が無いように思える。やむおえず、奮発してタクシーで鶴岡へ向かった。長旅で距離感覚が麻痺していたか、鶴岡までは20キロ以上あり、予想以上の乗車賃にうろたえた。
 昨日から風呂に入っていないので、鶴岡近郊の湯野浜温泉へバスで行くことにした。バスの到着まで1時間近くあるので、駅のテナントに入っている居酒屋で、地魚?料理と地酒の昼食をとる。

 鶴岡は江戸時代に酒井家鶴岡藩17万石の城下町として発展した町で、町の中心市街は駅から少し離れた南側にある。駅前はショッピングモールやファミレスなどあり、寂れている訳ではないが、人影は少ない。バスは鶴岡市街を抜け、鶴岡城の横を通り郊外へ走る。山形自動車道の下をくぐると、今回の目的地である羽前大山。北に進路をとり、海の守護神・龍神の寺として知られ、漁業関係者のメッカとして年中参拝者が訪れる善宝寺を過ぎると、いよいよ日本海が姿を現し、湯野浜温泉へ到着する。

 どんよりと鼠色の空に、激しい日本海の波や風が雪交じりで吹き付ける。夏の海水浴シーズンには多くの海水浴客で賑わうだろうが、この季節は閑散としており、休館中の旅館もある。太平洋側の冬の海ではサーファーが繰り出しているが、漁師も海に出られないような冬の海ではさすがにそれもない。なによりも、自分以外に人影を見ないので、やや不気味である。とりあえず、町営の公衆温泉がいくつかあるらしいので、そのうちの1軒に足を運んだ。古びたコンクリート造のなかなかシブイ、「上区公衆浴場」に、恐る恐る入ってみる。明るく人情味のあるおばちゃんが親切に説明してくれた上に、荷物も帳場で預かってくれた。
 温泉はかなり高温、熱い湯好きでも長時間はつらい。掛け流しの温泉は浴槽からあふれ、床を覆っている。他の入浴客(地元の常連)は、岩盤浴のように温泉が張った床に寝そべっていた。泉質も強く、床にすわっているだけで、汗が噴き出してくる。

 帰路のバスには、自分一人しかいなかった。羽前庄内の酒どころ羽前大山で下車。造り酒屋を中心に伝統的な古い家並みが残っている。四軒の酒蔵があるがうち三軒はお休みだった。日本酒資料館を併設した渡會本店では、丁寧な説明と聞き酒をさせていただき、そこで酒を購入して鶴岡駅へと急いだ。
 訪れたのは1月だったのだが、2月の第2土曜日に大山新酒・酒蔵まつりが開催される事を知る。酒蔵が独自に行う、新酒飲み放題のイベントは各地で見るが、四軒の酒蔵合同のイベントはそうそうお目に掛かることは無い。
 前もって分かっていれば、羽前大山へ訪れる日取りを調整したのだが、あとで考える事にする。


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 酒田発新潟行きイベント快速「きらきらうえつ」は16:34に鶴岡駅を発車した。
「きらきらうえつ」といえば、「銘酒呑みくらべセット」が知られている。7種の銘酒の中から好きな物を3種類選び、ショットで提供されるもので1,000円くらいだったか。しかしなんと、今は販売されていなかった。
 目的の一つが挫かれ不服だったが、先ほど購入した地酒の栓を開けた。しかし、この列車はつまみ系の酒類も少ない。弁当に至っては、酒田で完売したとか。おいおい、まだ一駅目だぞ。

 あまりにド派手なカラーリングの「きらきらうえつ」は、もちろん新造列車では無く485系700番台の特急列車を改造した3両編成のハイデッカー車で、天井はややせまっているが、グリーン車並みのシートシートに座ると、腰の位置にまで窓があり、視野はすこぶる広い。 まあ、これだけで今までの所業がすべてチャラになる感じだ。
 全席指定席で、日本海側がA席。仮にA席が取れなくても、先頭車にはパイプベンチに中間車のラウンジなど、早い物順ではあるが、チャンスはある。
 この列車は基本的に土日休日に、新潟〜酒田を1往復する形態で運行され、 下りは早朝で上りは夕方。また、
5〜10月には象潟まで延長運転される事もある。

 鶴岡を出てから、勢いよく地酒を飲み過ぎたせいで、景勝・笹川流れあたりでは酔いつぶれてしまっていた。それでも、うとうと薄目から見える、薄暗い中に灯る家々や駅の灯りと青色の風景に、長い二日間の終わりを感じながらも、いまだ東京から300キロ以上離れた地にいる現状に、もしかしたら、まだ旅が続くかのような幻想をいだいているのも、酔いによるものだけではない気がする。

 「きらきらうえつは」18:28に新潟駅に到着した。ここから東京へもどるには18:35発の「とき346号」が最短で接続しているが、200系新幹線は昨年の只見線の旅の時に乗っており、前々から2階建新幹線に乗りたい願望があったので、今回は1本遅らせ、19:18発のMAXとき348号を待つ事にした。昨日と同じく、駅のショッピングモールで夕食とビールを購入して新幹線ホームへ。
  入線してきたのは、最新のE4系では無く初期型のE1系だった。まあ、E4系は次ぎの機会に乗れば良いのでそれにしても、2階建て新幹線は宇宙船の様に迫力がある。車体から響く騒音も大きい。

 ドアが開き子供のようにはしゃぎながら二階へ駆け上る。うおお、3:3の6列席。まあ、車体の立ち上がりも垂直に近いし、普通の新幹線よりもワイドがあるのだろう、と後から考えればありえない事を疑問も持たずに、窓側の席を確保した。で、席に着いてあることに気が付く。リクライニングレバーが無い・・・。よく見ると、シートはベンチの様に繋がっている。アームレストはセパレーターでしかない。こ、これは・・・。
  なるほど、Maxは着座率を上げることを最大限の目標に開発された車両で、見はらしが良く開放感のある2階席
の自由席はこの仕様なのだ。乗車定員MAXとは(本当の意味はMulti Amenity eXpress)、JR東日本の利益主義を批判する声もありそうだが、観光バスの補助席のごとく、立つよりは座れた方が数十倍良い。
 ちなみに1階席は5列でリクライニングする。通勤・通学客がメインユーザな為に速度よりも輸送力に重みを置いた設計の為に動力性能は200系新幹線と同等らしい。
  今回の乗車で車両端部にある通常高(平屋部というらしい)の存在を知る。この平屋部分は2:3のリクライニング席が3列あり(連結器側は1席少ない)個室感覚で、一部ユーザーには人気があるらしい。たしかに、自由席を求め、1階の閉塞感と騒音にまみれるよりは、この車端部の平屋席がベストだろう。

 いずれにしろ今回は2階の窓際席で、東京までの一時を我慢する事にする。いろいろ不満はあるが、それでも、車窓からの眺めは、夜にもかかわらずそれなりに良かったのは幸である。Maxときは先にでた各駅停車のときに比べ停車駅が少ない為に、ときとは数分しか違わない、21:20に上野駅に着いた。ここから自宅まではさらに2回乗換が必要である為、終点の東京までは乗らずに、利便性の良いこの上野駅で降車した。
  それにしても濃い、濃すぎる週末だった。明日は普通に出勤するが、会社の同僚はこの土日の行動距離を想像だにしないであろう。
  ちなみに今回の乗車区間の料金を単純計算すると、実に5万円近くになるようだ。十二分に元は取れたと共に、何ともパワフルでコストパフォーマンスの高い「土日キップ」を再確認した。

 
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